プロローグ 始まりの日は
マサラタウン。
少年が生まれたのはこの街だった。
青い空に、白い雲が浮かび、浜風が髪をなびかせる…
特にこれといった施設や建物は無かったが、
好奇心旺盛な少年に施設や建物はいらなかった。
ほんの少し街からはずれて、草むらに入り、
水あそびやポケモンを捜したり、する事は、
他のどんな施設よりも面白いものであった。
そして、この街に生まれた少年は、成長し、ポケモンと触れ合う内に、
ポケモンマスターになりたいという夢を持つ様になった。
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星一「早く行こうぜ、大和!」
元気のあるこの少年は星一。この時12歳である。
一緒にいるのは大和。星一と同い年で、いわゆるライバルだ。
大和「…お前元気ありすぎだぜ…」
星一「早く、早く!こっちの方にポケモンがいるって話なんだからよ!」
大和「分かってるって…確かにポケモンはGETしたいけど…
   もうちょっと待ってくれないか?息が…」
星一「…たく…しょうがねぇなぁ…」
この計画を提案したのは友達の方であった。
口コミで流れた情報から、マサラの西にあるこの山に
レベルが少し低めなポケモンがいるという事を知り、
まだ一匹も持ってない二人ともポケモンをGETしようとする作戦だった。
しかし、もうすぐすれば日が暮れてしまうだろう。
そうすれば帰るのは困難になる。
それなのにコイツは…と星一は思わずにはいられなかった。
星一「お前、ホント体力ないな」
星一が小石を投げながら話した。
木々の間を抜け、小石は闇に消える。
大和「お、お前が体力ありすぎなんだよ…」
星一「まーったく…よ!」
そう言って星一が再び小石を投げた時だった。
ガツッというニブイ音が闇から聞こえた。
星一「え…?」
二人は顔を見合わせた。
低い鳴き声の様な物も聞こえてくる。
星一「…もしかして」
大和「だな」
その瞬間、二人がバネを利かせて逃げ出した。
後ろの林からはニドリーノが出てきた。
星一「いやぁ、まさかニドリーノが居るとはなぁ…」
星一が走りながら大和に話しかける。
大和「…お前、覚えてろよ……」
星一「いやぁ、しょうがないじゃないか、
   だいたい、元はと言えば、お前が休もうっていったのが…」
後ろの方から雄叫びが聞こえる。
仲間と連絡をとっているにちがいない。
星一「まずいな…一旦帰らねーと…」
その瞬間、前の草むらからニドリーノが飛び出してきた。
星一と大和の足が止まる。
さっきのとは違う奴…つまり、仲間の様だった。
星一「…大和、とりあえずお前先に逃げろ」
大和「は?何を言って…」
星一「街へ降りればオーキド博士と連絡がつくだろう?
   とにかくこのままじゃ二人とも死んじまうからな。
   俺がアイツの気を引く!早く行け!」
大和「わ、わかった!」
大和がわきにそれて走り出した。
ニドリーノがその動きに反応するが、星一が
石をぶつけて注意を向けた。
星一「お前の相手はコッチだぜ。ほら、来いよ」
ニドリーノが怒りをあらわにして向かってきた。
星一「よし…ひとまずこれで安心だ」
星一が再び走り出した。
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何分くらい走っただろうか。
星一には大分疲れが溜まってきている。
ふと、足が落ちた。
星一「うわ!」
どうやら崖があったらしい。
辺りが暗くなっていた為、下の方はみえないが、6〜7mはあるだろう。
星一はかろうじて、右手で捕まっているという状況だった。
星一「…いきなり崖かよ…ちっ……後何分耐えられるか…
   まあ、逆にこれでニドリーノが俺を見失ってるから、
   考えようによっちゃぁ…」
星一の思惑通り、崖の上でニドリーノは星一を見失い、うろうろしていた。
星一「このまま…やり過ごせば……」
しかし、時間と共に星一の握力がしだいに薄れてきた。
星一「くそ…さんざん走り回ったから…な…」
そして、星一の手が崖から放れた。
死んだ。
星一はそう思った。
自分の体が落下していくのがわかる。
しかし、その感触が無くなった。
落ちきったのだろうか。それにしては案外痛く無い。
死んでしまったから痛くないのだろうか。
星一が気を失う間際に考えたのはそれだけだった。
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ふと、目が覚めた。横になっていた。
自分は死んだのだろうか。
まだ、意識が朦朧としている。
自分の横に人がいるのが見えた。
青年「気付いたか」
その人が話し出した。どうやら、
年は星一より5〜6歳年上であろうか。
だが、暗闇で顔は良く見えない。
青年「あそこはニドリーノのなわばりなんだよ。
   あそこでなんかすると狙われる。次から気をつけろよ。
   それにしても、なんであんな所にいたんだ?
   いきなり崖から落ちてるの見たからビビッたぞ」
星一「ポケモン…を捕まえに…」
星一が朦朧とする意識の中で答えた。
青年「ポケモンを捕まえに…か。確かにあそこらへんは
   結構ポケモンいるが…ニドリーノのなわばりはやばかったな。
   ま…これをやるからもう、無茶はするなよ」
そう言って青年は腰からモンスターボールを取り出した。
青年「ゴースだ。捕まえたばっかだが、そこらの
   ポケモンより、よっぽど使えるだろうぜ」
モンスターボールを受け取った時、星一の意識は途絶えた。
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「星一…」
その声で星一は目覚めた。
大和「星一、気付いたか」
星一「や、大和…」
辺りを見回すと、オーキド研究所の様だ。
オーキド「いやぁ…ビックリしたぞ。大和がいきなり
     "星一がニドリーノに襲われてる"と聞いた時は。
     どうやら、二人ともポケモンを獲りにいったようだが、
     あそこら辺はニドリーノのなわばりも存在していて…」
星一はオーキド博士の話を軽く聞き流しながら、考え事をしていた。
考え事の内容は勿論、自分を助けてくれた人の事だった。
あれは本当にあった事なのか?自分が夢を見ていたのでは…
そう思った時、ポケットに違和感を感じた。
何かと思って取り出すと、それはゴースの入ったモンスターボールだった。
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ポケモンマスターになりたい。
その気持ちはこの一件少年の中で大きくなり、一年後旅立ちを決心した。
この物語は、その旅立ちの朝から始まる……