ポケ編第2話「二人の先輩との接触(コンタクト)」
日隆生「うう…まだ日隆生のままか」
朝起きて、元小杉は鏡をみてうなだれた。
あれから一週間。いっこうに体に変化が見られない。
日隆生の名前には慣れてきたのだが…
日隆生「オレ、どうなっちゃうんだろ……
    カープだった頃が懐かしいな、新井先輩に、新山先輩がいて…」
そこまで言った瞬間、日隆生はひらめいた。
日隆生「そうか!あの二人なら、オレの事多少は知ってるし、
    口も堅そうだし…よし、行くか、二人の所へ!」
そして、日隆生はスグに着替えて、カープの寮へ向かった。
外に出ると冬の風が冷たく頬をなでた。

−カープ選手寮−
日隆生「うわぁ、懐かしいなぁ……」
日隆生は寮を見て呟く。
ほんの数週間前、自分はココで暮らしていたのだ。
しかし、ほんとに数奇な巡り合わせによって、自分はここと離れてしまった。
日隆生「今のオレの暮らしとは全然違うよなぁ……
    寮だけでも、球団の良さがわかっちゃうし…
    おっと、早く新井さんに会わなきゃ…」

−星一の部屋−
トントン
星一「はーい」
奥から声がした。
ガチャ。
ドアを開けた瞬間、星一は困惑の表情になった。
星一「ん?誰だ、お前」
そして、日隆生を見て、呟いた。
日隆生「あの、オレ…」
その時、日隆生は
"オレ、小杉です"と言って信じて貰えるだろうか。
すぐさま追い返されてしまうかもしれない.
寮の中に入れば多少は話を聞いて貰えるかもしれない…と思った。
日隆生「おれ、モグラーズの新影日隆生ともうします。
    新井先輩と、新山先輩にお伺いしたい事が……」
星一「オレと星満?まあ、いいや。上がってろ。星満呼んできてやる」
日隆生が部屋で待機している中、星一は走り出した。
星一が星満を連れてきたのは1分後だった。
日隆生は正座して、座っていた。
星一「で?俺等に何の用?」
星一はあぐらをかいていた。
日隆生「実は……オレ、小杉なんです」
星満「あれ?お前新影じゃないのか?」
星満がすっとんきょうな声をあげる。
日隆生「いえ、本当は小杉なんです。
    広島東洋カープの小杉なんです!」
星一と星満が顔を見合わせる。
少し信じられないという顔だった。
星一「小杉?小杉は……昨日も試合に出てたぞ。どういうことだ?」
星一がやや真剣な眼差しになった。
日隆生「ですから、オレが3ホーマー打ったあの日に、
    廊下でこの日隆生ってヤツとぶつかって、
    心が入れ替わっちゃったんですよ!」
星一「……それ、本当の事か?」
日隆生「本当です!オレの名前は小杉優作です!」
日隆生の目はとても澄んでいた。
星満「どう思う?星一」
星一「う〜ん…話し方は小杉そっくりなんだけどなぁ…
   どうにもありえない話っていうか…」
星一が日隆生をまじまじと見つめながら喋った。
星満「そこなんだよ」
日隆生「え?」
星満が力を入れて説明しだした。
星満「俺等を騙すのが目的だったんなら、もう少し
   まともな嘘をつくとは思わないか?」
星一「なるほど…それも一理あるな。
   いきなり体が入れ替わった…なんて、
   普通信じられる話じゃない…」
星満「ま、裏をかいてそうやってる可能性も無いとは言い切れない
   からな、問題を1つ出そう。それで信頼するかどうかは決める」
日隆生「テスト…ですか?」
日隆生が少し緊張しだした。
星満「そうだ、お前が小杉なら簡単な問題だ」
日隆生「はあ、ではお願いします」
一瞬、沈黙が流れた。
星満「オレがお前に初めてラーメンをおごってやった時の
   ラーメンの種類と値段は?」
日隆生「へ?おごってもらった事なんて無いですよ」
日隆生は即答した。
星満「あら、どうやら本物のようだな」
星満は、驚いた顔で言った。
日隆生「ああ、良かった……」
星一「いい問題だな、本人じゃないと答えられない」
星満「ま、そうでなければ困るからな。
   さて、問題はこれからだ…お前が小杉だというのは分かった。
   しかし、俺等に出来ることなんてだな……」
日隆生「日隆生…いえ、今の小杉の行動を監視していて欲しいんです。
    何か妙な動きがあったらスグに……それまでオレは
    日隆生として、モグラーズで頑張っていきます」
星一「そうか、大変だろうけど、頑張れよ」
日隆生「はい、ありがとうございます!」
星満「あ、そうだ」
日隆生「はい?」
星満「お前が、小杉だと分かると色々面倒な事になる。
   正体はばれないよーにしろよ、それとお前からも
   今の小杉に言っておけ。正体がばれないようにしろ、と。
   だが俺等が本当の事を知ってるって言うなよ」
日隆生「はい、分かりました!じゃあ…小杉に言ってから帰ります。
    今日は本当にありがとうございました」
そして、日隆生は部屋を出ていった。
星一「……人生色んな事があるんだなぁ…」
星満「全くだ。今でも半信半疑だよ」
そして、星一達は練習場へと繰り出した。

−練習場−
練習場では小杉がバッティングをしていた。
球がどんどんスタンドへ運ばれていく。
星満「調子いいなぁ、小杉。このままじゃ、
   ピッチャーのお前にオレ抜かれちまうぞ」
小杉が星満に気付く。
小杉「いえ、そんな事ないですよ。まだまだ、星満先輩には追いつけません」
小杉がまた一本打った。今度はフェンス直撃だった。
星満「ふ〜ん……ところでさ、お前にオレが初めてラーメンおごって
   やった時のラーメンの種類と値段覚えてるか?」
小杉がバッティングを止めた。
小杉「……なんですか?いきなり…」
星満「いや、別に。ちょっとな…」
小杉「二年も前の事ですよ、ラーメンの種類まではちょっと…」
星満「…そうか」

−モグラーズ二軍練習場−
日隆生「よっし!凡田君!優勝だ!
    モグラーズを優勝に持っていくんだぁー!」
日隆生は凡田を引っ張ってグラウンドを駆けていた。
凡田「やれやれ、随分と明るくなったでやんすね。
   しかも、正気でやんすか?優勝なんて…」
日隆生「頑張ればやれない事はない!やるぞー!
凡田「そうでやんすよね…
   よーし!ガンバルでやんすよーー!」
日隆生「オーー!」
古沢「やれやれ、元気なヤツらだな」
不運にも体が入れ替わってしまった、小杉優作。
日隆生として暮らす彼にも少し光が見えてきたようだ。