ポケ編第3話「黒野博士の策略」
−6月上旬−
凡田「日隆生君、今日の試合は監督が見に来るらしいでやんすよ」
日隆生「え?監督ならいつも……」
凡田「それは古沢監督でやんす!
   オイラが言っているのは一軍の北条監督でやんす。
   あ、ほら、あそこにいるでやんす!」
凡田の指さした先には、眼鏡をかけた青年が立っていた。
日隆生(ああ、そういえばモグラーズの監督はあの人だったな)
凡田「とにかく良いところを見せて、一軍に昇格でやんす!」
日隆生「よし、良いところ見せるぞ!」
・
・
・
結果は打者としてだったが4打数2安打だった。
北条「ふむ、選手は育っているようだな」
古沢「日隆生はどうだった?」
北条「まあまあだったが、まだ一軍のレベルじゃないな」

−とある夜−
日隆生「ん?」
恵理「……あ……」
後ろを振り向くと、恵理がそこにいた。
日隆生「また、後をつけてたみたいだな。
    えーっと、恵理さん?」
恵理「ご、ごめんなさい」
   あの、その……ご迷惑かな、とか
   思ったんですけど……
   最近電話してくれないし………」
日隆生「(う〜ん…やっぱり疑われて正体がばれるのは避けないとな…)
    いやー、実は電話番号がわからなくなっちゃって」
恵理「ええ?!」
恵理が大きな声をあげた。
恵理「あ、そうだったの?
   やだ、私ったら勝手に………
   えーっと………はい、これ!」
恵理はメモを渡した。
日隆生「ありがとう」
恵理「もう、無くさないでね」
日隆生「分かったよ、ごめんな」

−7月下旬−
日隆生「ん?なんだ、この怪しい建物は」
後ろから、眼帯をつけたオッサンが現れた。
日隆生「うわ!」
××「オイ、お主。人の顔を見てびっくり
   するとはちょっと失礼ではないのかね?」
日隆生「すみません。
    あまりに個性的な姿だったもので」
××「ふむ、科学者たるもの、ハッタリも大事だからな」
日隆生「科学者……ですか?」
黒野「さよう!
   この世の真理を探求せんとする者
   黒野鉄斎とはワシのことじゃ!
   ワハハハハ…ゴホ、ゴホ!」
日隆生「大丈夫ですか?」
黒野「うむ、ちと笑いすぎたな。
   ちなみに、これは私の研究所じゃよ」
日隆生(こういう人ならかえってオレの問題を話せるかも知れないな)
黒野はまだむせていた。
日隆生「ちょっとお話が」
・
・
・
黒野「なるほど……実に興味深い話じゃな」
日隆生「これから、オレはどうすればいいんでしょうか」
黒野「なーに、簡単なことじゃ。
   ワシにまかせれば、人間の外見なんぞ
   すぐに作り直せる。
   だから、君の外見を小杉そっくりに作り直せばいいんじゃ」
日隆生「あ、なるほど!……
    でも、それじゃ、世の中に小杉が二人になりませんか?」
黒野「じゃから、向こうの小杉を説得して
   今のお前さんの姿にすればいい」
日隆生「でも、オレが言うのもなんだけど
    小杉ってスター選手じゃないですか。
    アイツがその立場を捨ててくれるとは
    思えないんですよ」
黒野「ハハハ、それも簡単じゃ。
   お前さんもスター選手になればいい」
日隆生「え!」
黒野「そうすれば、お互いの立場を元に戻しても、
   なんの不満もあるまい?」
日隆生「そ、そうか!なるほど……なるほど!
    ありがとうございます!
    将来に光明が見えてきました!
    よーし、こうなったら急いで帰って練習だ!」
(タタタタタタ…)
黒野「ふむ、気の早いヤツじゃな?
   簡単にスターになれるともおもえんが。
   まあ、がんばれ若者!」
日隆生「ようやく見つけたぞ!」
走りながら叫んだ。
日隆生「オレが小杉に戻れる方法が!」
その走りは止まらない。
日隆生「どんな、困難でも、やってやる!」
夕陽がオレを見守っていてくれた。

−夜道−
(ぽかっ)
××「よっ、こんばんわー!」
顔グロに金髪。いわゆる子ギャルと言うヤツか。
日隆生「ええっと、どなたですか?」
××「お前、恵理の男の日隆生ダロ?
   あたし、同じ店のソムシーだよ」
日隆生「ああ、恵理さんの知り合いか」
ソムシー「お前、ウチの店来たよね?
     その時会ったじゃないか」
恵理「ああ、ああ、そうだっけ。オレ忘れっぽいから」
ソムシー「フーン???
     恵理は寂しがりやだから
     お前、時々電話してあげるね
     それじゃ、またねー!」
(タタタタタッ………)
日隆生「なんだったんだ…とりあえず明日電話してみるか」
・
・
・
−翌日−
(トゥルルル…トゥルルル…)
(ピッ)
日隆生「もしもし、恵理さんですか?」
恵理『はい、わたしは恵理ですが?
   え、ひょっとして日隆生さん?!』
日隆生「う、うん」
恵理『わあ!
   もう、"恵理さん"なんて呼び方
   するから、わからなかったよ。
   いつもみたいに"恵理"でいいよ』
日隆生「えっと、そのことも含めて
    ちょっと話がしたいんだけど
    出てこれる?」
恵理『……えっ?
   あ、はい!』
・
・
・
恵理「今日は楽しかったよ。じゃ、また誘ってね!」
日隆生「う、うん。
    ……まいったな。
    あんまり楽しそうだから、オレは別人
    だって話、切り出せなかった」
−翌日−
公園で、ソムシーと恵理が話していた。
恵理「ねえ、彼が人が変わったみたいに
   親切になったんだけど、どう思う?」
ソムシー「わお、良かったね!
     きっと、恵理の愛が通じたんだよ」
恵理「……真面目に相談してるんだけど」
ソムシー「う〜ん…他に女いて、ソッチに
     すげなくされたからと、いう所かな?」
恵理「やっぱり、それ?最近、連絡無かったのも。
   昨日もなんだか言いたいことがありそうにしてたし。
   じゃ、そっちのヨリが戻ったら、あたし、
   ポイッとされちゃうんだ」
ソムシー「………」
・
・
−翌日−
日隆生「う〜ん……やっぱり言っておかなきゃなぁ…」
(トゥルルルルル……)
(ピッ)
恵理『はい、もしもし』
日隆生「あ、恵理さんですか?」
恵理『あ、日隆生君!電話ありがとう!…でも、
   その"恵理さん"ってのやめてくれる?
   恵理でいいよ、前みたいに』
日隆生「えーと……恵理?」
恵理『うんうん、それがいいよ、やっぱり。
   ところでさ……』
・
・
・
恵理『じゃあ、またね!』
(ピッ)
(ツー、ツー、ツー)
日隆生「また、切り出すことが出来なかった……」
(チャラリーン)
携帯のランプが光り出した。メールを受信したらしい。
日隆生「なんだ?」

日隆生「えーと……恵理からか。"おやすみなさい"…
    ふう、とりあえず返しておくか。
    "おやすみなさい"……っと。
    まあ、しばらくこのままでいいかな」
携帯を枕元に置き、眠りにつく日隆生。
明日からの日々に希望が増えているのは間違い無かった。