新井星一物語高校編第二十二話:最後の夏

甲子園で星一達が優勝した後の グラウンドは星一達を見に来たファンでいっぱいだった。 「星一くーん!こっちむいてー!」 「鴨方くん!あのホームランかっこよかったわ!」 とにかく、うるさいことに変わりはない。 星一のファンは在る程度いたが、 今度の大会で鴨方と星満のファンが一気に増えた。 星満「ちょっと………うるさいかな」 鴨方「っていうかうざいな、オイ」 −昼飯時− 屋上で星一と星満と光が一緒に弁当を食べていた。 星満「お?なんだ、星一本野の愛妻弁当か?」 星一「ば、ちげーよ!だいたい愛妻弁当って妻がつくるもんだろ(笑)」 星満「ま、細かいことは気にせずに……」 星一「全然細かくねぇーよ!」 星一が後ろから来た女の子に気付く。 星一「オイ、星満。アノ子が来てるぜ」 アノ子とは上野桜(うえのさくら)のことである。 星満の凄いファンでちょくちょく会いにくるのだが…… 星満もまんざらじゃないようなのでOKなのだが……… 桜「星満!」 桜が星満を呼ぶ。後輩で星満のことを呼び捨てに するのは桜しかいない。 星満「おう、桜。なんのようだ?」 桜「いや、ちょっと弁当作ったから食べて!」 星満「お、サンキュ。今日もまた、パンかと思ったよ」 桜「食べたかったらいつでもいってね!」 星満「ああ」 星満が戻ってきた。 星一「なんだ、お前も貰ってるじゃないか」 星満「うるっせぇーな!いいだろ、別に!」 星一「はいはい」 星一が箸を進めた。 その後の秋の地方大会は城南高校の優勝。 6試合やり、得点37、失点1という成績だった。 春の選抜も優勝。 佐賀総は何故か出場を辞退してしまい、 結局星一との対決は出来なかった。 −夏が近づいてきたある日− 星一が星満と帰宅途中。 星一「にしても数学の授業わっかりにくいよなぁ」 星満「ああ、俺達がまだ、内容を理解してるとはいえ、    あんな教え方じゃ分かる奴あんまいねーっての」 星一「ま、お前ならどうせテストはラクショーだろ?」 星満「お前だって、いつもテスト前は勉強して無いじゃないか」 星一「理科と数学と現国と歴史はな。他は勉強している。」 星満「へ、よく言うよ、それでほとんど満点近い点数とるくせに」 星一「おまえなぁ、おまえは最低でも2教科は満点いくじゃないか」 星満「あれ?そうだったか?」 星一「へ、しらじらしい……」 スッ 一人の女が星一の横を過ぎていった。 勿論、星一は気にしないのだが。 少し歩いたとき ??「ねぇ、星一?」 さっきの女がいきなり叫んだ 星一「!?」 びっくりして後ろを向く。 ??「あ、やっぱり星一だー!」 星一「??」 ??「何?もしかして私のこと忘れたの?    私よ、私。知子(ともこ)よ!」 星一「知美?………あ、ああ!中学三年でクラスが一緒だった!?」 知子「そうそう、覚えててくれたんだー!うれしー!」 星満「誰?こいつ」 星一「ああ、こいつ、中学の時俺と同じクラスでさ。    野球部のマネージャーみたいなことやってたんだよ」 知子「初めまして」 知子が星一に向かって挨拶する。 星満「初めまして」 星満がニコッと微笑んだ。 星一「なんで、お前こんな所にいるんだ?」 知子「ちょっと欲しい参考書がこっちのほうしかなくて……」 星一「ふぅん……ちゃんと勉強してるんだ」 知子「な、なによその言い方ー!私だってちゃんと勉強してるんだからね!」 星一「ハイハイ」 星満「……」 星満が呆気にとられたように見ている。 星一「あ、こいつな。中学の時、    オール2を取っちゃってヤバイから    とかいって先生に言われて俺が勉強教えてたんだよ。    毎日毎日。先生は"お前は勉強しなくても平気だろ"    とかいっちゃってさ。    苦労の甲斐あってオール4までもってったんだぜ!」 星満「オール2をオール4!?それって凄くないか!?」 星一「ああ、先生も目ぇ丸くしてた」 知子「でも、私があの高校に入れたのも星一のおかげだからね、感謝感謝!」 星満「あの高校……?」 星一「アレ?そう言えばお前どこの高校いったんだっけ?」 知子「私?私はあかつき大附属高校に行ったのよ!」 星一「へぇ……」 知子「でも、星一君卒業式の時"たまには会おうね"って言ったら    うなずいてくれたけど全然会いに来なかったじゃない!」 星一「あ、ああ。スマン。お前といると、どうもあいつを    思いだしちまいそうでな……」 知子「………」 知子の表情が急に曇った。 星満「(あいつ?)」 急に知子が話題を変えた。 知子「ま、まあ人にばっか迷惑かけてられないから    自分から勉強しているわけ」 星一「ふぅん………」 知子「そうかぁ……卒業してからもう二年半もたつんだね……    星一君は全然変わってないね」 星一「お前は……変わったな。明るくなった。あの時より、ずっと」 知子「それで?星一君、高校に行ったんだから彼女ぐらい作ったわよね?」 星一「ば、ばか、何言い出すんだよ」 星満「いるいる、おおいにいるぜ」 星満が横から口を出す。 知子「ホント!?いるの〜?でも星一君、    中学の頃からホントモテモテだったよね?」 星一「そうだったっけな………?」 素っ気ないふりをして星一が話す。 知子「まったまたーチョコなんか10個は貰ってたじゃない    しかも今なんか甲子園にも出ちゃったし!凄いんじゃないの?」 星一「もう、いいだろ。その話は」 知子「ハイハイ。じゃあ、私ちょっとこれから用事があるから」 星一「おう、じゃあな」 星満「……星一」 星一「なんだ?」 星満「あいつって……誰だ?」 星一「……昔の事だ」 そういって去っていってしまった。 星満「あ、お、おい!」 星一はもう行ってしまった。 星満「(まあ、誰にでも触れられたくのない過去があるものだからな)」 そして、夏が来た。 −城南高校− 星一「また……夏が来たな」 投げ込みをしながら星一が呟く。 光「そうね。去年私達優勝したんだね……」 セミの声がグラウンドに響く。去年とまるで変わらない音だ。 阿畑「星一ハ〜〜ン!」 向こうから駆け寄ってくる。 星一「なんだ?」 阿畑「今な、新しい変化球を思いついたんや!」 星一「マジで!?よっしゃぁ、試すぞ!」 星一が駆けだしていった。 光「相変わらず熱心ねぇ……」 星満「なぁ」 星満が声をかける 光「わ!ビックリした!いきなり話しかけないでよ!」 星満「あ、あのさぁ、星一って中学時代になんかあったの?」 光「ああ、中学の時の話は自分からは決してはなさいの。   唯一話したのが大和君と会ったときの話だけ」 星満「やっぱり……」 光「やっぱりって何?何かあったの?」 星満「いや、あのさ……」 星満が事情を話す。 光「ふぅん……星一にも辛い過去があるのかも……まって?」 星満「何?」 光「星一って普段はまじめに毎日部活出てるけど、   2度だけ来なかった日があるの」 星満「いつ?」 光「2月の……1日」 星満「2月1日?なんかあるのか?その日に」 光「分からない……そもそも、関係ないかもしれないし………   でも聞いてみる価値はあるんじゃない?」 −あかつき大附属高校− 汗を拭いながらロッカーで進が話しかける。 進「兄さん!いよいよ甲子園ですね!」 守「ああ、今度は負けないぞ」 進「ハイ!」 −佐賀総合学院− 大和「フン!」 大和はバッティング練習をしていた。 大和「今年は負けないぞ……」 大和が汗を拭き、空を仰ぐ。真っ青だった。 地方大会で城南が優勝。甲子園進出を決めた。 また、あかつきも、佐賀総も進出を決定した。 その後トーナメント表が配られた。 星一「……佐賀総とは準決勝まで当たらないのか……」 星満「お、ホントだな。さて、一回戦の相手は……」 星一「月影高校?変な名前だな」 −試合の日− 実況「さあ、本日第四試合目となるのが    前回優勝の城南高校と初出場の月影高校です!    さあ、お互いの選手が入場してきました!」 星一「オイ、なんだよ。真っ黒なユニフォームなんて初耳だ」 星満「ああ、全く変な高校だぜ………」 その後9回の表まで終了。城南5−0月影 城南高校の圧倒的リードである。 しかし、日が傾いてきた。ヒグラシの声がする。 月影高校のベンチで相手が呟く 敵「フフ、これからだぜ、うちの高校は………」