新井星一物語高校編第二十三話:あの日の記憶

日が傾いてきた、東の空はもう暗い。 ??「フフフ、城南高校もここまでさ」 星一「大分日が暮れてきたな」 星満「ああ、ボールが見えにくい」 ウグイス「9回のウラ、月影高校の攻撃です」 闇中「かっ飛ばせよ、暗闘(あんとう)」 ネクストバッターサークルから声をかける。 暗闘「まかせとけって。……もう、日も沈んできた」 星一(クソ、見にくいな……だが、相手も同じ条件だ) 星満(よし、ストレートだ。暗いから平気だろう) 初球はストライク。二球目はカーブでボール。 三球目はシュートでストライク四球目はカーブでボール。 カウントは2−2となった。 審判「ボール!」 スライダーがはずれてボールになった。お互いに追い込まれている。 暗闘「……(もう暗闇にもなれた。そろそろ撃つか)」 星一(どんどん暗くなってくる……もう、星満を見るのがギリギリだ) 六球目。ストレートのサイン。 しかし…… カキーン! 薄暗い甲子園に打球音が鳴り響く。センター方向だった。 ミッキー「薄暗くて……良く見えない!」 パシッ。ボールを弾いてしまった。 ミッキー「あ……」 すぐさま拾って投げるがランナーはすでに2塁に付いていた。 すぐに次のランナーがバッターボックスに入る。 打者「どうした?ボール見えてないんじゃないのか?」 その瞬間星一の頭の中にある記憶が思い出された。 薄曇りの中を星一が立ち尽くす。 一人の男がこっちを見た。 フッと口元が動く。 "ボールが見えてないわけじゃないよな?" 星一「いや、そういうわけじゃないんだが……」 "もうすこしだ、がんばろう" なおも声が続く。 そこで記憶が途切れた。 星一「(クッ……こんな時に!)」 星一がバッターを再び見る。 不適な笑みを浮かべている相手。 星一の記憶の中の男と被る。 集中できていない星一の球を打者はライトへ運んだ。 ランナー1・2塁。 その後、一人を抑えるが今度は送りバントを 冬北がエラーしてランナー満塁。 次のバッターを三振にして、二死満塁。 "調子が出ないみたいだな" また、声が星一の頭に響いた。 "とにかく後少しだ、頑張るんだ" そして投げた第一球。 カキーン!! 打球音が鳴り響く。 実況「はいった!はいりました!月影高校ついに1点差!」 星一「……え?」 星一がようやく打たれたことに気付いたらしい。 頭をかすめてくる声に気を取られ集中できなかった。 星一「一点差……?」 記憶喪失になったかのようにぼやく。 星満がかけよってくる。 星満「だいじょうぶか?球に力がこもってないぞ」 星一「スマン、ちょっと気を取られてて……」 星満「とりあえずあと一人だ。    三振を取る組立で行くから」 星一「わかった」 星満が元の位置に戻る。 打者をツーストライクに追いつめて第三球。 星一「これで、最後だ!!!」 ビュウゥン!! 審判「ストライク!バッターアウト!」 サイレンが鳴り響く。 実況「試合終了〜〜!城南高校勝利です!    一度は1点差に迫られながらも    星一君が見事に抑えて勝利です!!    これで城南高校はあかつき高校との対戦です!」 スタンドで守と進はこの試合を見ていた。 守「いくぞ、進」 進「ハイ、兄さん」 守(星一がHR打たれたときの一球……   あまりにも気が抜けすぎている……   なにかあったのだろうか?) −準々決勝VSあかつき高校−  123456789101112 計 城100020000011 5 あ200000100010 4 城南高校5−4あかつき高校 星一の先頭打者HRで先制点をあげる。 その後、立ち上がりを進と守に狙われ、 アベックホームラン。 その後、ランナー一塁から星満が3ベースを打って1点返すと、 続く鴨方が2ベース。しかし7回には進と守の打撃で再び同点。 延長戦に突入後、11回にミッキーの走塁で1点を取り返すが 次の回で下位打線に上手く繋げられ、再び試合は振り出しに。 しかし、12回に星一がソロを打ち、再び突き放す。 その後、三者三振でゲームセット。 あいさつの後、守が話しかけてきた。 守「凄かった。完敗だよ。特に最終回の気迫には   素晴らしい物を感じた」 進「ボクに投げた三球目のフォーク。最高でしたよ」 守「……星一は、このままプロへいくのかい?」 星一「どうだろうな、いくんじゃないのか?このままだと」 守「……大学野球をやらないか?」 星一「大学野球?」 守「ああ、そうだ。あかつき高校は大学が付属している。   僕もプロへ行ってもいい実力だけど、   もうすこし、法学を学びたいと思ってね」 星一「だから?」 少し呆れた風にかえした。 守「そういうことさ。プロへは君ならいつでもなれるだろう   だから、大学へ行ってもう一度勝負しないか?」 星一「まあ、……別にいいけど……」 守「そうか、ありがとう」 守はそう言って歩き出した。 守「星一君」 星一「?」 守「今度は負けないよ」 守が不適な笑いを浮かべた。 その後、進が事故にあったという話を聞き、 あかつき高校に行ったが猪狩はいなかった… −一週間後− 守「星一君いるかい!?」 バタン!と部室のドアを開けて守が入ってきた。 星一「い、猪狩!?」 守「大変だ。進が」 星一「事故だろ、一体どうして……」 守「……そこまでは知ってるのか」 星一「そこまで?」 守「その後……進が行方不明になったんだ」 星一「え?」 守「ボクがいつものように退院祝いにいったんだ。高級フルーツを片手に」 星一「…………」 守「でも進はいなかった。看護婦さんが言うには   迎えの人が来たらしいんだ。ボクはてっきり父さんが   使いを送ったのかと思ったけど父さんは知らないと言った。   で、進を探しているんだけど、見なかったか?」 星一「さぁ・・・俺は見なかったけど」 守「そうか……すまないことをした」 星一「見つかったらすぐ連絡する」 守「頼んだよ」 星一「じゃあな」 守「おっと」 星一「?」 守「ガンバレよ」 星一「わかった」