新井星一物語高校編第二十四話:全力投球

−準決勝戦当日−
星一達は軽く投球練習をしていた。
星一「いよいよ最後の夏での大和との戦い……だな」
星満「ああ」
星一「おっと、バスの時間だな」
星満「ホントだ。急ぐぞ」

−甲子園球場スタンド−
守「星一………」
進を探している猪狩が球場に立ち寄っていた。

−試合開始時間−
実況「さあ、始まりました。注目の一戦!佐賀総合学院VS城南高校!」

 123456789
佐00000000
城20000100

3−0で迎えた9回の表

実況「ああっと、フォアボール!これもはずれました!押し出しで1−3!
   佐賀総合学院二点差です!」 
5番から6番、7番と連打され、8,9と2アウト取るが満塁の場面に
今、フォアボールで一点取られ、2番のヒットで4−3ランナー2,3塁。
三番打者に対して初球ストレートを投げるが………

打者「ストレート!」
カキーン!
強烈な打球が星一に襲いかかった。
星一「クッ!」
バシッ!星一の左肩にボールが直撃した。
ボールが宙に浮いたのをすかさず夏西が取って2アウト。
夏西「オイ、星一大丈夫か?」
すぐに駆け寄る。
星一「大丈夫だ、気にしなくていい」
星満「まあ、とりあえず投げてみるか?」
星一「ああ」
振りかぶって投げようとしたその瞬間だった。
ズキッ!
肩に激痛が走る。
星一「クッ!」
ヒュ〜〜ン……パシ
威力も無い上にコントロールが定まっていなかった。
星満「お、オイ!治療した方がいいんじゃねぇか!?」
星一「そのようだ……な」
星一がベンチへ入っていった
実況「どうやら星一君、怪我をしたようです。
   果たして投げられるのでしょうか?」

−ベンチ−
光「これは……非道いわね。真っ赤に腫れているわ。
  動かせることは出来ても投げることは出来ないかもしれない…」
星一「やっぱりそうか。俺も薄々感じていたんだが」
星満「どうすんだよ、お前……」
星一「何、俺にひとつ考えがある」
星満「え?」
星一「星満、普通のグラブ持ってるか?」
星満「あ、ああ。一応持ってるけど、ピッチャー用。
   何に使うんだ?だいたいコレ……まさか………」
星一「そ。そのまさか」
星一がニッっと笑った。

実況「あっと星一君、ベンチから出てきてました!
   今、マウンドに登ります!」
星一「よぉ、大和。待たせたな」
大和「…………」
大和は妙な違和感を覚えた。
原因が何であるかはまだ分からなかったが。
実況「さあ、星一君、果たしてどれくらい投げれるのでしょうか?
   今、プレートに右足をかけ……右足!?」
大和「右足?右手で投げるだと!?」
違和感の答えが見つかった。星一のグラブが左手にはまっているのだ。
星一はもともと左利き、それを右で投げようと言うのだ。
甲子園からはどよめきが渦巻いた。

−少し前のベンチ−
星満「まさかって……お前右で投げる気か!?」
星一「モチ」
星満「何いってんだよ!だいたいお前左利きで……」
星一「俺はもともと右利きさ」
星満「え?」
星一「中学の頃、右手を複雑骨折してな。すっかり完治してるが、
   あのころの左での暮らしでなれちまってよ。
   右の方が球速は高いんだが、事故の時の違和感で、
   妙にコントロールが下がってな。それが気に入らなかったんだよ」
星満「………」
星一「だから、肩を痛めた左より、よっぽど使えるとおもうぜ?
   コントロールが下がるけどな」
星満「……わかった。それで行こう。球種は左と一緒か?」
星一「いや、スライダーとシュートは投げれない。
   変わりに…………」
   
実況「まさかまさかの星一君右投げでの登板です!
   甲子園は今、大いにわき上がっています!!」
星一(よし、第一球目は……?)
星満はストレートのサインを出していた。
実況「さあ、星一君、第一球投げました!果たして
   いかほどの球なのでしょうか!?」
ギュウゥウゥウゥゥン!!
大和「な!?は、速い!151……155……イヤ、それ以上だ!!」
ズバアンッ!!
審判「ボール!!」
実況「なんと星一君、ボールになりながらも159km/hです!」
星一「やはり、上手く入らないな………」
星一が不満そうに呟く。
大和(速い……今まで俺が対決したどの投手よりも!
   これで左のコントロールがあったら誰も打てないだろうな……)
その後、二球三球とストライクを取るが、
一回ボール、二回ファール。もう一回ボールでフルカウントとなった。
大和(速い……フォークも凄い速さだ157は出ている……
   カーブも恐ろしい重さだ、ジャストミートしたはずなのに
   ボテボテのファール。右での星一も恐ろしい………
   左になってから覚えたシュートとスライダーが
   投げれないというのが大きい。これがもし投げれるのだったら……)
星一が帽子を脱いで額の汗を拭った。
帽子をかぶり直し、投球モーションに入る。
大和「ストレート!!」
ガキン!
実況「あっと、星一君の気迫が勝ったか、ピッチャーフライ!
   星一君がっしり取ります!3アウトチェンジ!」

打順は7番、夏西から。
夏西ははボール、ファール、ファールストライクで三振、
秋南もセカンドゴロでアウト
しかし、冬北はデッドボールで出塁。
星一の打席が回ってきた。
ワァアアアアァァァァァアアァァァァアアア!!
実況「お聞き下さい!この大歓声!二死ランナー一塁で
   バッターは星一君です!」
星一「…………」
実況「抑えられれば城南の負けですが、ホームランなら、サヨナラです!
   さぁ、期待の一打席です!!」
星一(大和………)
バッターボックスに入る。
星一(オレ…………)
打一球目はストレート。結果はファール。
星一(やっぱりお前が……)
そして、二球目。
カキーン!甲子園に快音がなり響いた。

歓声が鳴りやんだ。

ライトスタンドにボールが飛んでいっている。
大和「何!?」
審判「ファール!」
実況「いや〜惜しい!切れました!ファールです!
   カウントはツーストライク!」
大和「行くぜ!三球目だ!!」
ギュウゥウゥゥウウン!
星一にはみなくてもストレートだと分かった。
星一(お前が……お前がライバルで本当によかったと思う)
星一がバットを振り始めた。
ストレートがホップしだした。
星一「やはりストレート!!!」
ギュウン!!急激にホップした!
星一「な!?」
ブン!!!空を斬る音が球場にこだまする。
審判「ストラーイッ!バッターアウト!ゲームセットッ!」
サイレンが鳴り始めた。
実況「ああっと城南高校敗れました!佐賀総合学院は決勝に進出です!!」
星一「ハァ……ハァ…終わった…………」
大和「星一」
星一「なんだ?」
大和「またいつか野球やろうぜ!!」
星一「……オゥ!」
二人は握手を交わした。
青い空にセミの声。そしてうだるような暑さ。
星一は一生忘れないだろう。
大和と全力を出しきって戦った夏を。
それでも力足りずに負けてしまった夏を。
そして星一の戦いは大学野球へと舞台を移す……………